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土曜日, 9月 23, 2006

the Shape of Jazz to Come NEW JAZZ 2006


今回の会場、友人が客として行って不快な思いをしたというのを聞いていたので、少々不安、というのは嘘で、実はそういう事に慣れてきている自分が怖い。今まで色々なフェスやイベントを経験してきているので、まあそれはそれなりにそんなふうな事もあったりするのだ。

現場には余裕を持って到着したつもりだったのだが、ステージに行ったら既にセッティングが始まっている。急いで自分のセッティングも。今回はEWIのみ。この日に関して言えば、運搬などの都合ではなく、積極的に選んだ結果である。

自分の準備はつつがなく整い、なんとなく良い感じ。しかしモニターチェックに時間がかかる。この日このステージで演奏するバンドはスタイルも編成も様々。スタッフの人達の間でも色々混乱があった模様。それでも、良くも悪くもイベント慣れしている我々、無事チェック等完了。
ステージには中島さっちゃんの姿も。渋さにはこの日が復帰第一弾となる。

出番まで食事に行ったり楽屋で準備体操したり。バーとして使えるスペースなので広々としていてリラックスできる。ケータリングが無いのはこの時は全く気にしていなかった。

本番。ボーカルのベーシックラインから「股旅」が始まる。自分は指示を出されてないが、勝手にイントロに参加。中高音域で五拍子のパターンを繰り返す。合図で本編。テーマはアンサンブルというより、自分のソロのつもりで歌い上げるように。
途中、いつものように静かになり、いつものメンバーのソロとなる。このソロにEWIで暴力的に邪魔をする。
ぶっちゃけ、仕事で演奏しているのだから、お客さんが喜んでくれればそれで良い筈ではある。しかし飽きるのだ。演奏している自分が。そして「飽きた飽きた」と言いながら演奏しているメンバーにも。
予定調和にまきこまれないように自分なりに頑張ってみる。そのためには電子音は非常に便利。巻き込まれたほうが楽しい場面ではもちろんお約束通りにやる。
「飛行機」。さっちゃんのイントロが美しくも歌いだしづらいスタイル。私も遊びに参加。真理ちゃん達の歌に被せて朗々と吹いてみる。川口隊長が「もっと行け!」と応援のサイン。嬉しい。
そしてすぐさま「ナーダム」。こいつは地味にバッキングのフレーズを吹き続けたり、社長によりそってみたり、遊ぶ。そして、そのまま「仙頭」で終了。

次は少しインターバルをおいて、プーさん(菊地雅章さん)の The Slash Trio だ。急いで片付け、メインフロアに向かう。幸運。まだ始まっていない。
音楽はフレージングではない、と思った。しかも最初の展開、このトリオはいわゆるピアノトリオですらない。全員がソリストで全員が----バッキングではなく----背景。しかも調和している。各プレイヤーが、自分の中にある出すべき音、出したい音を奏でているよう。次第に「自然な出したい音」から「演奏したい音」へと変化が感じられる。楽器に対する肉体的な衝動までもが飛び出してくるかのよう。独特な集団即興から、ある意味トラディショナルなフリージャズへと聴こえ方が変わってくる。自由だった全パートが、次第にプーさんのコントロール下に置かれ、音が変容して聴こえてくる。
プーさんの音楽的文法は、他のピアニストとかなり違うように思う。セシルテイラーが、例えば印象派的な美しさだとすれば、プーさんの美しさは優れたハンティングナイフの輝きのような鋭さ。一つ一つの和音がとても美しい。トーンも美しい。しかしそれらの組み合わせは「美しい」という感想を拒否するかのように響く。そして、一見無骨に見えるその音の奥に美しさが秘められているのだ。

プーさんのステージが終わって楽屋に戻ったらびっくり。自分の荷物が無い。そういえば、次に使う出演者にあけわたすとは聞いていた。しかし荷物まで廊下にぽつねんと放り出さなくても。しかも、我々の時には無かった食べ物飲み物てんこもり。自分たちは前座どころか客入れのBGM扱いであったことを思い知ったのであった。

自分の荷物を多少は安全と思える場所に移動してからサブフロアへ。菊地成孔さんのクインッテットダブ。
もう若者でぎゅうぎゅう詰め。多分、キクチナルヨシという現象に踊らされている大衆のサンプル達。
今の成孔さんの活動は、その総体がコンセプチュアルアートのようなもの。音楽も著作も、「これに全力投球」というものは無い(ように見える)。そこに惹かれている人が大勢いるようなのだが、それを動機に演奏まで見に来るとは凄い。そもそも本人達にその自覚があるのかどうかも怪しい。
そして演奏が始まる。最初はハードなフリージャズ。どうみても集まった若者達はやせ我慢で聞いているように見えてしまう。
自分はと言えば、バンドの内容はどうでも良いと言ったらいいすぎだが、成孔さんの音が凄く好きなのだ。

色々な演奏を聴いているうちに、自分でもバンドをやりたくなってきた。やろうと思う。そう思った瞬間、携帯端末でmixiに「バンドやります」宣言書き込んでた。こうすれば実行率たかまる。プチ追い込み。

しかしウォーターフロントは冷たい風が吹いていましたよ。物理的にも心理的にも。
床に座るのは禁止されており、座っている人のところに係員が行っていちいち立たせている。長丁場、圧倒的に椅子が足りない中、立っていられない人も出てくるだろう。私だって楽屋追い出されてくつろぐ場所ナッシング。
立ち続けでからだがこわばってきたので、木材張りのデッキでストレッチ。開脚してたら「座らないで下さい!」と飛んできた。体操のためのポジションでも座ってると見なされるのか。試しに、というか確信犯的に完全に横になってみた。すぐさま立たされた。
そこで一計。床に座るのがダメなら、床以外のところに座ろう。椅子はいつも満席。そこで、何も営業していないカウンターに座ってみた。お咎め無し。どうなっとるんだ。マニュアル人間どもめ。まああんまり事件らしい事件はおきずに済んで良かった。そんな予感があったのだが。

今日はトロンボーンの高橋君とずいぶん話した。彼が妙に色々な事を私に対して思ってくれているのがくすぐったい。

さて、バンド。そして、次回のライブの作戦だ。